鳥居正宏のときどきLOGOS

EU宗教政策諮問委員会(Y.S.E.E.)メンバー、アムネスティ・インターナショナル会員、社会民主党党員の鳥居が、政治・社会・文化・国際問題などについて、時々に感じることを個人的に書き綴ります。 (C)無断転用・無断転載不可。全ての記事の著作権は鳥居正宏にあります。

私は、大阪市の中心部「日本橋」と呼ばれる地域のマンションに住んでいます(ちなみに、この地名の読み方、大阪は「ニッポンバシ」で、東京は「ニホンバシ」と区別するのが正解だそうです)。


うちの近所には、何軒かのネットカフェがあります。おそらく「ネットカフェ難民」と呼ばれる人たちも出入りしているのでしょう。また、公園や高速道路の高架下に住んでいる人たちも見かけます。


先の参院選の投票へ行くときに、ふと、1つの疑問がわいてきました。それは。。。


ネットカフェ難民と呼ばれる人たちや、公園や高架下で生活している人たちも、その多くは、おそらく日本国籍を有していて、派遣や、工事現場での日雇い労働、または空き缶やダンボールなどを集めて生計を立てている。懸命に、必死に、毎日を生き抜いている。そうした、この人たちの選挙権は、いったいどうなっているのだろうか。日本国籍を有する成人であれば、全ての人に選挙権があり、投票できるはずなのではないのか。


という素朴な疑問です。


私は、疑問を感じれば調べずにはおれない性分なので、さっそく『日本国憲法』をふたたび読みなおしてみました。そのなかで、私たち市民の投票に直接にかかわる(直結するような)条項としては:


【第15条】 
(1)公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
(2)すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
(3)公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
(4)すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。


【第93条】 
(1)地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
(2)地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。


という2つの条文だけでした。


そこで、これではよくわからないので、昨日、大阪府選挙管理委員会に直接電話をして、上記の私の疑問をぶつけてみました。電話の応対をしてくださった選管の女性は、たいへん丁寧に回答をしてくださいました。その回答とは:


「鳥居さまのおっしゃるとおり、日本国籍を有する成人、つまり20歳以上の人であれば、憲法の定めにより、全ての人に選挙権はあります。しかし、実際に投票をするためには、選挙人名簿への登録の義務があり、その選挙人名簿へ登録するには、役所へ届け出た一定の居住地に3ヶ月以上定住していなければなりません。ですから、おっしゃるとおり、路上生活の方々などにも、日本国籍があって、20歳以上であれば、憲法の定めによって、全ての人に選挙権はあります。しかし選挙人名簿に登録されていない場合、投票をする権利は認められていないのです」


うむぅ。。。どうにも腑に落ちない。
選挙権はあっても投票する権利がないということ?
それは実質上、選挙権がないのと同じではないか?


再び原点の『日本国憲法』に戻ってみよう。。。
(こういう煮詰まった時にこそ、原点回帰をするのが私の方法論なのです)


『日本国憲法』
【第14条】には、
(1)すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。


とあります。つまり、公園や高架下の生活であっても、ネットカフェ生活であっても、政治的、経済的又は社会的関係において、いかなる差別もされないということが保障されています。


また、さきに掲げた【第15条】には、
(3)公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。


としか書いてありません。「公園や高架下の生活者、ネットカフェ生活者はダメ」などとは、どこにも書いてありません(あたりまえですが)。


そして【第22条】には、
(1)何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。


とあります。つまり、「公共の福祉に反しない限り」公園や高架下の生活であっても、ネットカフェであっても、居住、移転及び職業選択は自由だということです。


よって、選挙人名簿への登録がないから、投票する権利が与えられないという現実の問題は、『日本国憲法』のなかには、どこにも書いてありませんでした。


ではこの問題は、『公職選挙法』で詳しく規定されているのかと思い、『公職選挙法』を読んでみました。『公職選挙法』は、かなりのボリューム。


そして、ありました!


『公職選挙法』
【第9条】
 日本国民で年齢満二十年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。

(2)日本国民たる年齢満二十年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。


【第21条】  
選挙人名簿の登録は、当該市町村の区域内に住所を有する年齢満二十年以上の日本国民(第十一条第一項若しくは第二百五十二条又は政治資金規正法 (昭和二十三年法律第百九十四号)第二十八条 の規定により選挙権を有しない者を除く。)で、その者に係る登録市町村等(当該市町村及び消滅市町村(その区域の全部又は一部が廃置分合により当該市町村の区域の全部又は一部となつた市町村であつて、当該廃置分合により消滅した市町村をいう。次項において同じ。)をいう。以下この項において同じ。)の住民票が作成された日(他の市町村から登録市町村等の区域内に住所を移した者で住民基本台帳法 (昭和四十二年法律第八十一号)第二十二条 の規定により届出をしたものについては、当該届出をした日)から引き続き三箇月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者について行う。



つまり『公職選挙法』第9条で「日本国民で年齢満二十年以上の者」と、基本的には憲法第15条の(3)の条文を踏襲しておきながらも、「日本国民で」との制限を独自に設け、さらに「引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者」との厳しい制限も独自に設けている。


また『公職選挙法』第21条で「選挙人名簿の登録は、当該市町村の区域内に住所を有する年齢満二十年以上の日本国民」と、トドメをさしている。


翻って、『日本国憲法』の第14条、第15条、第22条を総合すると、これらの条文は、公園や高架下の生活であっても、ネットカフェ生活であっても、いかなる政治的・社会的差別も受けることなく、また普通選挙を保障し、居住、移転及び職業選択は自由であることが認められているのです。国家の最高法規である『日本国憲法』がそう保障しているのです。


にもかかわらず、『公職選挙法』では「引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者」で「選挙人名簿の登録は、当該市町村の区域内に住所を有する年齢満二十年以上の日本国民」との厳しい「政治的な差別と排除」ともとれる制限をかけている。


この『公職選挙法』の排他的な制限事項は、『日本国憲法』第14条、第15条、第22条の精神に真っ向から反しているのではないでしょうか?


そこで、きわめつけの、ひとこと!


『日本国憲法』
【第98条】には、
(1)この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部または一部は、その効力を有しない。


と明記されています。これは、たいへんにチカラのある条文です。


つまり、『公職選挙法』の政治的排他主義の制限事項は、『日本国憲法』第14条、第15条、第22条の精神に反しているのならば、『日本国憲法』第98条の規定によって『公職選挙法』そのものが「その効力を有しない」ということになりますよね。


さらに言えば『日本国憲法』においては『公職選挙法』にあるような「日本国民で」や「日本国民たる」というような、国籍を限定した条文は、どこにもありません。


『公職選挙法』そのものが、ネットカフェ難民と呼ばれる人たちや、公園や高架下で生活をしている人たちばかりではなく、たとえば、永住している在日外国人の人たちをも意識的に(「日本国民で」や「日本国民たる」との文言で)排除・差別している、排他的な法律であり、それは民主主義の理念に反し、本来ならば『日本国憲法』第98条の規定により「効力を有しない」のかもしれない。。。


『公職選挙法』は、上記のように、政治的・社会的な排他的事項を含んでおり、『日本国憲法』の精神に反する、かなり問題のある法律なのではないかと思う今日このごろです。


これにかわる(またはこの問題を解消する)1つの提案として、たとえば、投票所(期日前投票所に限ってでも良いので)、の一角に専用の窓口をいくつか設けて、公園や高架下で生活をしている人たちや、永住している在日外国人の人たちは、運転免許証や健康保険証、外国人登録証、その他公的な身分証を提示すれば(二重投票を防ぐために)コンピュータのオンラインシステムで即座にチェックをして、その場ですぐに投票をできるシステムはつくれないものか。


さらに、上記のような公的身分証のない人でも、「今回は投票したい!」という志を持っている人ならば、各市町村長や弁護士などの、法律上の公的な立場の人が、指定した投票日の1日に限って、無料(公費負担)でその人の身元保証人となって、指定投票日1日限り有効の身分証を発行し、上記の窓口で投票できるようなシステムはつくれないものか。


このようなシステムを構築することこそが、ほんとうの意味での「民意を汲む」ということであり、「民主」主義の基本理念だと思うのです。


私は、ずっと歴史学を学んできました(歴史は未来を映し出す鏡といいますが)。法律については、国際法は、国際アムネスティや、欧州連合の諮問委員会などで勉強をさせていただける機会を得ているのですが、国内法については、全くの独学なのです。


国内法における上記の問題、すなわち『公職選挙法』における政治的・社会的な排他主義的事項を含んでいる問題と、『日本国憲法』の精神、そして『日本国憲法』第98条の「効力を有しない」との関係について、民主主義の理念上、どう捉えればいいのか。『公職選挙法』は、もしかしたら憲法の精神に反する『悪法』なのか。


みなさん、そして法律のプロである法学者さんや弁護士さん、国会で立法をされる議員の先生がたなど、いかがお考えなのでしょうか?


もしよろしければ、ご教示ください。
まだ私の溜飲は下りません(笑)


気長に(何ヵ月でも)待っていますので、もしよろしければ、コメントをください。


【出典】
1.『六法全書 2003』三修社 2002
2.『公職選挙法』(電子政府法令提供システムよりダウンロード)2007


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