昨夜は、久々に時間にかなりの余裕があったので、1人で自室でDVDを観ていました。
私が特別に好きな映画、『眺めのいい部屋』 (E.M.フォースター原作、ジェームス・アイボリー監督、ヘレナ・ボナム・カーター、ジュリアン・サンズ主演、1986年、英国、日本公開1987年)です。
この映画、私がまだ大学1回生の時に劇場で観て、その映像の美しさと、ストーリーの美しさに感動し、その後、原作本も、ビデオも、サントラCDも、そしてDVDが出ればDVDも買ったのです(笑)
私はこのころのヘレナ・ボナム・カーターが一番好きで、写真集CDも持っています。他に彼女が出演している英国映画では『鳩の翼』や『ハワーズ・エンド』も好きで、DVDを持っています。
最近劇場で観たものとしては、ヘレナ・ボナム・カーターは出ていませんが、やはり英国の映画で、『ラブ・アクチュアリー』に感動しました。
『眺めのいい部屋』や『鳩の翼』『ハワーズ・エンド』そして『ラブ・アクチュアリー』などの英国の映画に共通しているのは、悪者が居ない。つまり「宿敵」が存在しないのです。
とくに『眺めのいい部屋』や『鳩の翼』そして『ハワーズ・エンド』などは、淡々とした、どこにでもありそうな日常の日々のストーリーのなかで、その登場人物はみんな善良なる一市民。みなが相手のために「よかれ」と思って行動をしているにもかかわらず、「運命のいたずら」とでもいいましょうか、主人公は不幸になり、悲しみ、そしてその悲しみを乗り越えて、強く、たくましく、輝かしく成長し、幸せを手に入れる。。。
私が、このような英国映画が好きなのは、ハリウッド映画の定番のように必ず極悪の「宿敵」が居て、その敵をコテンパンにやっつける「正義の」ヒーロー登場。という、単純明解な「暴力につぐ暴力」「暴力の連鎖」「暴力の応酬」が、ただの1個所も存在しない。というところに魅力を感じています。
たしかに、世の中には「悪人」がたくさんいます。その悪人を(法に則って)罰するのは正義です。でも、自分の人生のなかでの「正義」とは何か?
を想いおこした時に、それは、
「自分の運命に打ち勝つこと」そして「幸せになる事」
これが、自分の人生のなかでの「正義」ではないか。
昨夜観ていた『眺めのいい部屋』で、主人公のルーシー(ヘレナ・ボナム・カーター)と、エマソン(ジュリアン・サンズ)の、下のような会話で、このことに気づかされたのです。舞台は20世紀初頭。ともに別々にロンドンから旅して偶然にフィレンツェで出逢った2人。2人はフィレンツェで「ある事件」を目撃する。
ルーシー : 「あっという間に事件が起きて、そしてまた元の生活に戻るのですね」
エマソン : 「ぼくは、戻らない」
ルーシー : 「どういう意味?」
エマソン : 「たぶん、ぼくは、生きる気になるだろう」
ルーシー : 「?」
エマソン : 「ぼくは、生きる気になるだろう、ということです」
エマソンは、軽い精神病、今で言う「ごく軽い、うつ病」のような状況だったのですが、ルーシーとともに目撃した「事件」をきっかけに、彼は自身の運命に打ち勝って、自身の運命への大きな疑問と恨み、そして悲しみから力強く立ち上がり、「生きる気」になったのかもしれません(映画の中で描かれている、主人公の彼と彼女の心理の動きについては、観るたびに微妙に違った変化が感じ取れます。それはおそらく観ている者の心理が主人公の心理に投影されてしまうのでしょう。そこに、この映画が、原作とともに「名作の中の名作」といわれるゆえんかもしれません)。
この「事件」とルーシーの「あっという間に事件が起きて、そしてまた元の生活に戻るのですね」という問いかけ、そしてエマソンの 「ぼくは、生きる気になるだろう、ということです」の返答を、私はいま、自分の直面している「事件」に重ねあわせてしまいました。
そして「そうか、そういうことか!」と、自分の心の中でモヤモヤとしていた黒い霧のようなものが、パッと晴れたような気がしました!
相手が「悪人」だと思うのではなく、たとえ相手が実際に自分を裏切り、5百万円近くもの損害をもたらし、私の生活を破壊し、私の夢も希望も奪い去った悪徳弁護士であっても、相手を「悪人だと思っている自分自身」に勝たなければいけない時もある。これから臨む裁判は、相手への「復讐」ではなくて、自分が幸せになる手段として活かしてゆかなければならない。そう思えるようになりました。
そう思えば、人との出逢いって、良いものでも、たとえそれが「最悪」のものになったとしても、自分の人生のなかでは、すべてプラスの方向へともってゆけますよね。
英国のこの種の映画って、ほんとうにいいですよね!
蛇足ですが、映画を観る前に原作を読んでしまうと、イメージしていたものとは違って幻滅することがありますが、映画を観たあとに原作を読むと、原作で語られている一言一言に、映画のシーンが浮かんできて、感動が倍増します。
【参考】
原作 : E.M.フォースター著作集第2巻 『眺めのいい部屋』 E.M.フォースター原作、北條文緒 訳 みすず書房 1993 (※ちなみに 『ハワーズ・エンド』 は、同著作集第3巻)
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