鳥居正宏のときどきLOGOS

EU宗教政策諮問委員会(Y.S.E.E.)メンバー、アムネスティ・インターナショナル会員、社会民主党党員の鳥居が、政治・社会・文化・国際問題などについて、時々に感じることを個人的に書き綴ります。 (C)無断転用・無断転載不可。全ての記事の著作権は鳥居正宏にあります。

私は、いつもは大阪市内を地下鉄で移動しているのですが、きょうは出かけた帰りに、久々に市営バスに乗りました。何年ぶりでしょう、市バスに乗るのは。


ちょうど、バスターミナルと地下鉄・私鉄の駅とが一体となっているところで、いつもは何の躊躇もなく地下へと階段を降りるのですが(バスは1時間に4本しかないので、なかなかタイミングが合わないのです)、たまたまバスターミナルのほうに目をやると、ちょうど、うちの近くのバス停に停まるバスが客待ちをしていたところでした。


そこで、きょうは地下へ3つもの階段を降りるのは面倒だと思い、久々にバスで帰ることにしたのです。


そのバスは、ターミナル駅からの始発ということもあって(それにそのバスの発車時刻までには、まだ5分ほどあったということもあって)、車内はガラガラの状態で、私は一番前(運転席のすぐ後ろ)に着席しました。


次第にお客さんが乗ってきて満席となり、そして立っている人もでてきました。

「こんなに地下鉄網の発達している大阪市内でも、まだ市バスを利用する人もたくさんいるんだなぁ」


などと思っていました。そうこうしているうちに、いよいよ発車。バスは大阪市内の幹線道路を快調に走っています。


その時、ふと気づきました。運転席からの見晴らしが、とてもいいのです。運転士さんの膝ちかくまで、バスの前面が一枚ガラスなのです。


そこで、ちょっと嫌な想像をしてしまいました。


「もし、このバスが、正面から何かにぶつかったとき、または、相手からぶつかってこられたとき、運転士さんはガラスを全身に浴びるだろうなぁ。それに、もしかしたら、下半身がバスの前部と運転席の椅子の間に挟まれて、たいへんな事態になるかも」


と。私が子どもの頃(幼稚園から小学校低学年頃)までは、運転席の前に長いボンネットのついたバスも普通によく見かけました(もちろん、ボンネットのないバスもありましたが)。1960年代後半から70年代初頭というのは、ボンネットのあるバスから、ないバスへのちょうど過渡期だったのでしょう。


もし、いま自分が乗っているバスに、長いボンネットがついていたら、ボンネットの中には頑丈な鋼鉄のエンジンが入っているわけで、運転士はかなり安全なはず。そういえば、トラックもダンプカーも、消防自動車も、私の子どもの頃には、みな、長いボンネットがついていました。それが、いつからか、正面が平らなものになってしまっている。


私は、いまは自動車を持っていませんが、数年前までは、ボンネットの長い、今時珍しく鋼鉄製のバンパー(いまのクルマは、ほとんどがプラスチックに似た、ABS樹脂製のバンパーですね)をつけた、自重が1トン以上もあるような、四輪駆動車に乗っていました。


私は車の運転が大好きで、友達数人を乗せて12時間以上、紀伊山地の山の中を運転し続けたこともあります(もちろん、途中で何回か休憩はしましたが)。そのクルマは、燃費は最悪でしたが、私は速くて軽いクルマよりも、重くても頑丈で馬力のあるクルマのほうが好きなのです。エンジンの振動がハンドルを通して全身に伝わってくるような、無骨で男らしいクルマでした。免許を取得してから22年になりますが、いままで、無事故無違反でゴールド免許証です。


たしかに、ボンネットが長いと、クルマの取り回しの時(とくに左折時には)ハンドルを切る角度やタイミングが難しいですが(私のそのクルマは、ボンネットにサイドミラーがついていて、そのサイドミラーの下に、ボンネットの真下を見るためのアンダーミラーがついていました。昔のボンネットバスと同じような2段ミラーです。それほどボンネットの長いクルマだったのです)、しかしその感覚(運転席の自分の足元から前輪、そしてボンネットの先端までの距離感)を体で覚えてしまえば、ボンネットの長さなど、何の苦にもなりません。


私の友人は、ボンネットのない、大型のステーションワゴン(ワンボックスカー)に乗っていますが、以前にその助手席に乗せてもらったとき、きょうのバスのいちばん前の座席に座ったときと同じような事を思いました。


「このクルマ、もし正面から何かにぶつかったり、相手に正面からぶつかってこられたら、怪我は免れないな」


と。確かに、ボンネットのないクルマは、自家用車にしても、バスにしても、業務用のものにしても、扱いやすいし、見た目もスマートでカッコイイのかもしれません。でも、そのことで、人間の安全を犠牲にしているのではないでしょうか?


逆に、上記の友人は、私のクルマの助手席に乗ったとき、


「こんなにボンネットの長いクルマ、取り回しが難しくて、俺には扱われへんわ。こりゃ、職人技やなぁ」


と言っていました。これらから思うのですが、現代の日本社会とは、見た目の良さや使い勝手の良さ、いわゆる「誰にでもできる」「簡単」さが第一の価値で、それを扱う人間の安全は二の次三の次ではないかと。社会の価値観そのものが、考え方そのものが、社会のありようそのものが、砂上の楼閣化してしまい、ほんとうに必要とされる、目に見えない価値よりも、外ヅラと安直さだけを追い求め、何もかもが安易な方向へ、安直な方向へと怒涛のごとく流れているのではないかと。だから、守るべきものを守らず、平気で偽装してしまう。偽装にまみれた、こんにちの日本社会。


バスという1つの乗り物から、社会のありさまや社会の価値観まで考えてしまうのは、考えすぎでしょうか???


私は、次に自動車を買う時も、燃費が悪くても、ボンネットの長い、頑丈で馬力のあるクルマを選びます。ボンネットのないクルマは、助手席に乗っていてもちょっと怖いので、自分で運転しようなどという気にはなれません。


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